にほんごのれんしゅう

日本語として伝えるための訓練を兼ねたテクログ

【書評】天冥の標IX PART1──ヒトであるヒトとないヒトと

 あれこれ3年ぐらいずっと読んできたシリーズの第9章。いよいよメニーメニーシープの世界がどんな状況に放り込まれているのかわかってきた。

 倫理兵器の存在目的がロイズ保険会社の顧客を十分に獲得するための正しい恋愛感情の流布なのだということで、なんで保険会社がロボットを作っていたのかようやくわかった。

 明らかにマツダヒューマノイドバイシスの技術を超えたAIと武装をしている2り組に関して、どの戦艦からなんの目的で、どれくらいの規模で偵察に来ているのかが明らかになる。彼らを作った技術がマイダスタッチ系の自己複製可能マシンに依っていることは間違いないらしい。

 ノイジーランドの家族観がめちゃくちゃなまま文化と伝統として引き継がれているのも面白い。

 フェロシアン(プラクティス)の真の目的は何か、が明かされる。プラクティスは生殖能力が失われてしまったので、能力の復活のためにカルミアンの母星に向かうところであったというのだ。それが何百年とあると誰もかれもが疲れ切ってきている。特にプラクティスの精神的疲労は限界だった。300年も、衛星セレスを宇宙船に改造して推進していたのである。

 文章全体の2割弱が今までの説明に当てられていて、これからどう畳み込んでいくか、小川一水先生の腕の見せ所といえよう。