Google Cloud FunctionをPythonで使う
世間ではAWS Lambdaばかり着目されますが、GoogleもCloud Functionと呼ばれるLambdaに相当する機能を提供しています
LambdaがPython,JS,Javaなどをサポートしているのに比べて、Cloud FunctionはJSのみのサポートとなっていています
Python3(PyPy3)をGoogle Clund Functionにデプロイして、実質的にPythonで使えるようにして、いくつかの応用例を示したいと思います
目次
- A. nodejsでしか動かないはずのCloud FunctionでPythonを使う
- B. gcloud-toolのインストール
- C. コード書いてデプロイする
- D. リクエストを送ってみる
- 調査: Cloud FunctionでScraperは使えるか
- 例: リクエスト送った人のGlobal IPを返すだけの例
- 例: (ユーザ行動などのIoT情報を取得する)ビーコンのデータを受け取りCloud Strageに格納する
- 例: Amazon Dash Buttonより便利な、クラウド操作ボタンをスマホに作る
- E: まとめ
A. nodejsでしか動かないはずのCloud FunctionでPythonを使う
1. 環境依存がないPyPy3を利用する
色々試した結果、いろんなLinuxの環境で動くように調整されたコンパイル済みで環境依存の少ないpypy3を利用することで、Google Cloud FunctionでPython3を利用できることがわかりました(どうしてもPython3の文法を使いたい主義)
$ bzip2 -d pypy3-v5.9.0-linux64.tar.bz2 $ tar xvf pypy3-v5.9.0-linux64.tar $ mv pypy3-v5.9.0-linux64 {YOUR_GOOGLE_CLOUD_FUNCTION_DIR}
pipの機能を有効化します
$ ./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3 -m ensurepip
2. 動作が期待できるライブラリ
OSがDebianでversionがよくわかっていません、そのため、手元のLinuxなどでコンパイルが必要なライブラリをコンパイルして送っても、動作しないことがあります。
どうしても動作させたいライブラリがある場合はCloud FunctionのLinuxのlibcやインストールされているshared objectを分析調査するスクリプトを別途記述して、確認する必要があります
- numpy
- requests
- BeautifulSoup4
など、PurePythonで記述されたものと、PyPyで正式にサポートされているnumpyなどは動作します
3. PyPy3にライブラリをインストール
pipはサポートされているので、このように任意の(限定はされていますが)インストールすることができます
$ ./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3 -m pip install flask
B. gcloud-toolのインストール
任意のLinuxで動作する方法を示します
何度かこのツールを使っていますが、aptやyumレポジトリを利用するより、直接バイナリをダウンロードして来た方が安定性が良い気がします
Googleからダウンロードすることができます
$ wget https://dl.google.com/dl/cloudsdk/channels/rapid/downloads/google-cloud-sdk-170.0.1-linux-x86_64.tar.gz $ tar zxvf google-cloud-sdk-170.0.1-linux-x86_64.tar.gz?hl=ja $ ./google-cloud-sdk/install.sh $ ./google-cloud-sdk/bin/gcloud init (各種、認証が求められるので、通しましょう)
.bashrcにこの記述を追加すると、相対パスを入力しなくても使えます
PATH=$HOME/google-cloud-sdk/bin:$PATH
Cloud Functionはオプション扱いらしく、こうすることで正しくインストールすることができます
$ gcloud components update beta && gcloud components install
Cloud Functionのコードやバイナリを置くbacketを作ります
$ gsutil mb gs://{YOUR_STAGING_BUCKET_NAME}
C. コード書いてデプロイする
ディレクトリの中で作業すると、そのディレクトリの中身全てがGoogle Cloud Functionのコンテナにデプロイされますので、あまり大きなファイルはおけないようです
エントリーポイント(Cloud Functionが呼びされた時に最初に実行される関数)はindex.jsという風になっています。
spawnというプロセス間通信を使うと、このJavaScriptのファイルと一緒にデプロイされPyPy3が実行されて、結果を得ることができます
const spawnSync = require('child_process').spawnSync; exports.pycall = function pycall(req, res) { result = spawnSync('./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3', ['./inspect.py'], { stdio: 'pipe', }); if (result.stdout){ res.status(200).send(result.stdout); }else if (result.stderr){ res.status(200).send(result.stderr); } };
デプロイはこのように行います
$ gcloud beta functions deploy ${YOUR_CLOUD_FUNCTION_NAME} --stage-bucket ${YOUR_STAGING_BUCKET} --trigger-http
D. リクエストを送ってみる
コードをデプロイしたタイミングでapiのURLが標準出力に表示されるので、そのURLを参照すると、Cloud Functionが実行されます
$ curl https://${YOUR_PROJECT}.cloudfunctions.net/pycall
$ curl -X POST -H "Content-Type:application/json" -d '{"message":"hello world!"}' https://${YOUR_PROJECT}.cloudfunctions.net/pycall
調査: Cloud FunctionでScraperは使えるか
AWS LambdaではFunctionを実行するたびに、IPなどが変わることがあるので、スクレイパーとしても利用することが期待できるのですが、Google Cloud Functionではどうでしょうか
1000回、Cloud Functionを呼び出して、その時のGlobal IPを調べて、どのような分布になっているか調べました
(Global IPを調べるサイトのAPIの制限で、累積値が1000になっていませんが、IPのレンジはAWSより広くなく、固まっている印象があります。また、やはりコンテナはなんども再利用されているようです)
107.178.232.249 8 107.178.232.247 8 107.178.232.181 7 107.178.236.24 7 107.178.238.51 6 107.178.236.4 6 107.178.236.8 6 107.178.232.167 6 107.178.237.16 5 107.178.232.180 4
IPという視点で見ると、効率的に使うことは現時点ではあまり期待できなそうです
例: リクエスト送った人のGlobal IPを返すだけの例
やってて思ったのですが、自分のマシンにscpで外部からデータを持ってこようという時に、いちいちiPhoneに記されたIPアドレス帳を参照していたのですが、コマンドを叩いてverboseを利用するより個人的には、jqなどのコマンドで確認できる方が望ましいと考えています
そのため、リクエスト送信元のheaderをjsonに変換してそのままインデントをつけて返します
index.js
const spawnSync = require('child_process').spawnSync; exports.reflection = function reflection(req, res) { result = spawnSync('./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3', ['./reflection.py'], { stdio: 'pipe', input: JSON.stringify(req.headers) }); if (result.stdout){ res.status(200).send(result.stdout); }else if (result.stderr){ res.status(200).send(result.stderr); } };
reflection.py
import json print(json.dumps(json.loads(input()), indent=2))
デプロイしてクエリを投げてみます
$ sh deploy.sh $ curl https://us-central1-wild-yukikaze.cloudfunctions.net/reflection2
出力結果はjsonフォーマットで、最初から結構見やすい!
$ curl https://us-central1-wild-yukikaze.cloudfunctions.net/reflection2 { "host": "us-central1-wild-yukikaze.cloudfunctions.net", "user-agent": "curl/7.55.1", "accept": "*/*", "function-execution-id": "03jbvskqvfyu", "x-appengine-api-ticket": "a140cc827b21f195", "x-appengine-city": "arakawa", "x-appengine-citylatlong": "35.736080,139.783369", "x-appengine-country": "JP", "x-appengine-https": "on", "x-appengine-region": "13", "x-appengine-user-ip": "118.241.189.54", "x-cloud-trace-context": "8ab2a49b8cd1c80b068daaafda2c85a1/10677056975691001014;o=1", "x-forwarded-for": "118.241.189.54", "accept-encoding": "gzip" }
(ユーザ行動などのIoT情報を取得する)ビーコンのデータを受け取りCloud Strageに格納する
アドテクというか、ユーザのサイト内での回遊情報を調べるのに一般的に、ページのどこまでを視認したか、スクロールしたか、PCなのかスマホなのか、画面のサイズは、ブラウザは、オーガニック検索なのか、直帰率はどうなのか、マウスオーバー情報はどうなのか、といった視点がJavaScriptで取得可能であることは、広く知られたことだと思います
これらの複雑なJavaScriptを受け取り、Cloud Strage(AWS S3のようなもの)に書き込むことができれば、サーバレスで行動ログを測定 -> 保存までできます。
さらに、DataFlowともプロセスをつなぐことができますので、実質的に、集計項目の設計、JSの実装(これは外部)、デプロイ、測定、分析、施策がEnd2Endでできやすくなって、素早いイテレーションを回せそうで、すごくいいです
ブラウザ側のjavascriptは割愛します
index.js
header, post, getなどの全てのパラメータをpythonに渡します
const spawnSync = require('child_process').spawnSync; exports.pycall_gcs = function pycall_gcs(req, res) { result = spawnSync('./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3', ['./cloudstrage-push.py'], { stdio: 'pipe', input: JSON.stringify({'headers':req.headers, 'body':req.body, 'query':req.query}) }); if (result.stdout){ res.status(200).send(result.stdout); }else if (result.stderr){ res.status(200).send(result.stderr); } };
cloudstrage-push.py
googleのCloud Strageに書き込む権限を与えたcredentialファイルと共にdeployして、ユーザやアクセス度(ここは適切だろう粒度で設計する必要があります)でuuidやhashで、blob(Cloud Strageにおけるファイル単位)を作り、書き込んで行くことができます
import os import zipfile import json import uuid import sys os.environ['GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALS'] = './credentials.json' raw = input() try: from google.cloud import storage from google.cloud.storage import Blob client = storage.Client() bucket = client.get_bucket('wired-ant') print(bucket, file=sys.stderr) uuid = '%s.shard'%uuid.uuid4() blob = bucket.get_blob(uuid) if blob is None: print(blob, file=sys.stderr) blob = Blob(uuid, bucket) source = '' else: source = blob.download_as_string().decode() blob.upload_from_string( source + raw + '\n', content_type='text/plain') except Exception as ex: print(ex)
試しに自分の無料のGCP枠で自分のgithub.ioに入れてやって見ましたけど、期待した通り動作していることを確認しました。 ただ、上書きが一度ロードしてからでないとできないので、何かうまくchunkingする方法を考えている次第です(しないという手もあります)。
例: Amazon Dash Buttonより便利な、クラウド操作ボタンをスマホに作る
Cloud Functionでも、AWS Lambdaでもいいのですが、ハマりどころが微妙にあまりないという制約があります
AWS Lambdaなどを繋ぎに、各種サービスをつないでいっていって価値のあるサービスを創出することが、一つの課題なのですが、単独で使おうとすると、リソース的な制約が大きく、機械学習も難しい(少なくとも現時点では)ので、ツール系になりがちです。
例えば、私は毎月クラウドの料金に苦しめられるのですが、計算が重いと言われる機械学習とはいえ、深層学習をのぞいて、朝起きて出社して、GCPやAWSにログインして、インスタンスを起動して、何かやって、帰り際にシャットダウンして〜とするので、120秒は溶けますし、というか、めんどくさいはプライスレスです
試しに、GCPで私が契約しているリージョンのインスタンスを出社して作業を開始する前に、一括起動し、IPアドレスを確認し、帰り際に一括シャットダウンします
例えば、iPhoneのホームボタンにはURLショートカットを載せることができて、urlショートカットにはurlパラメータを載せることができます。つまり、iPhoneの画面上で動作する、Amazon Dash Button的なものを作ることができるのです!のです!
index.js
htmlのコンテンツを生成して返す感じです
const spawnSync = require('child_process').spawnSync; exports.pycall_instance_controls = function pycall_instance_controls(req, res) { result = spawnSync('./pypy3-v5.9.0-linux64/bin/pypy3', ['./instance-control.py'], { stdio: 'pipe', input: JSON.stringify(req.query) }); if (result.stdout){ //res.status(200).send(result.stdout); res.status(200).send(`<!doctype html>` + result.stdout + `</html>`); }else if (result.stderr){ res.status(200).send(result.stderr); } };
instance-control.py
GCPの承認情報をlocalに通してしまって、pypyにgcloud関連をインストールすると、このような闇魔術が使えます
from oauth2client.client import GoogleCredentials credentials = GoogleCredentials.get_application_default() from googleapiclient import discovery compute = discovery.build('compute', 'v1', credentials=credentials) imgs = ['"https://ja.gravatar.com/userimage/9847738/e0cfe4c445d28598ffc3d0a4fd235fa5.jpg?size=200"', \ '"https://ja.gravatar.com/userimage/9847738/647f7900b8912b0669a1da2edc352b5e.jpg?size=200"', '"https://ja.gravatar.com/userimage/9847738/44b7b8d6b72f2dce6609be9e059c3920.jpg?size=200"'] html = ''' <head> <title>GCP Control</title> <link rel="icon" href={img}/> <link rel="apple-touch-icon" href={img}/> </head> <body> <p> {body} </p> </body> ''' project = 'wild-yukikaze' zone = 'asia-northeast1-c' def stop_all(): instances = compute.instances().list(project=project, zone=zone).execute() for instance in instances['items']: name = instance.get('name') compute.instances().stop( project=project, zone=zone, instance=name).execute() print(html.format(body='finished all tear down', img=imgs[0])) def start_all(): instances = compute.instances().list(project=project, zone=zone).execute() for instance in instances['items']: name = instance.get('name') compute.instances().start( project=project, zone=zone, instance=name).execute() print(html.format(body='finished finished all start up', img=imgs[1]))
アイコンは大事
オタクの皆様には語るまでもないですが、印象とユーザビリティを大きく支配するものなので、かわいいが好きなのでかわいい高解像度のアイコンを設定できるかどうかは、わりと死活問題です
htmlのメタタグにこのようなデータを入れると、高解像度のICONが作れます
<link rel="apple-touch-icon" href={img}/>
また、ICON画像は外部のサイトを参照させることが可能で、gravatar.comさまの公開URLを利用すると便利です
コード
E. まとめ
Cloud Function面白いですね
ディスクに書き込む作業ができないので、temporaryな処理を書き出す際には、Google Cloud Strageなどの外部のサービスと連携する必要がありますが、pipで各種モジュールをインストールできますので、なんでもできます
しかし、もっとも頭を悩ませたのがリソースの制約で、圧縮して特定の容量を超えると、zipファイルでもデプロイできません。この制約は機械学習を使いたい時、モデルのデータサイズが大きい勾配ブースティングと深層学習はきついので、SVMまであたりでの運用となりそうです
将来、Google Cloud FunctionやAWS Lambdaのリソースの緩和で大きなデータが扱えるようになってくると、ほとんどのサービスにおいてサーバレスが実現するかもしれません